デジタル湿度計を作ろう…失敗の巻
〜 プロジェクト ひとりでできるもん! 〜
Last Update: 17th, Nov, 2000
概要
これまでに、「ひとりでできるもん!」でおなじみの(有)秋月電子通商から発売されている計測器キットをいくつか作ってきました。「液晶標示のガイガーカウンタ」にはじまり、「デジタル紫外線計」、「デジタル照度計」、「デジタル温度計」、「デジタル電圧計」などです。そして、今回は「デジタル湿度計」を作ることに挑戦してみました。
結果的には失敗でしたが、失敗を公表することも価値あることだと判断しました。これは、失敗したデジタル湿度計の製作メモです。
失敗の要因
端的に言えば、難しいキットであったことです。紙に印刷された「かわら版」には、キットの難易度を表すランク付けがされているページがあります。このランクでは
2級 (上級者向け)となっています。これまでに製作したもので、ランクが高かったものは
3級 (中級者向け)の「デジタル照度計」でした。
電子工作の基礎基本がよく解っていない作者にとっては、ランク
3級 の「デジタル照度計」も、ユニーバーサル基盤を用いることに大きなハードルがありました。今回の「デジタル湿度計」は、部品の多さや調整の難しさが更に負荷されています。
作者は、ユニバーサル基盤で部品が多かったことに失敗の要因があると考えています。調整の時点でうまくいかなかったこと(詳しくは後述)は、基盤の製作にどこか誤りがあったと考えるのが妥当です。
キットについて
デジタル湿度計キットは、「デジタル電圧計キット」と「湿度計キット」を組み合わせたキットです。「湿度計キット」だけでは販売されていませんので、「デジタル電圧計キット」も購入することになります。「湿度計」部分で
1%RH が 1mV となるように電圧として出力して、「デジタル電圧計」部分で数値として標示させるかたちです。
このキットの「デジタル電圧計」部分は、既に「お得な!?デジタル電圧計を作ろう」で製作済みです。
湿度計キット
湿度計キットの主な特徴は次の通りです。
- 高分子湿度センサである HS-15FP(SCIMAREC)
が用いられていて、測定範囲は 10%RH 〜 90%RH
です。
- 電源電圧は +5V50m単電源動作なので、「デジタル電圧計」との電源の共有はできません。006P
電池を使用していますが、連続使用の場合、3
〜 4 時間です。
- センサが直流で使用できないため、LM555 で三角波を作り、オペアンプとして
LF412、LM324 が使用されています。オペアンプには、log
アンプ、AC/DC 変換アンプ、温度補正アンプ、測定出力アンプなどがあります。
湿度計キットの製作
前述したように、このキットはユニバーサル基盤を用いて組み立てなくてはなりません。作者にとっては、説明書の部品配置図とパターン図が頼りの綱です。
ユニバーサル基盤のキットをつくるための工夫
説明書では参考例ということですが、これにできるだけ近いかたちで製作せざるをえません。デジタル照度計を作ったときのように、部品配置図とユニバーサル基盤上の位置を明確にするための桝目を引いたり、部品配置図とパターン図を透明シートにコピーしたものを用意したりしました。この
2 枚のシートを重ね合わせ、回路図をながめながら、抵抗やコンデンサを特定していきました。しかし、これで間違いなしという自信をもつには至りませんでした。
基盤の製作
ジャンパー線や抵抗、コンデンサ、ダイオード、IC類など、部品を取り付けること自体はそれほど難しくありませんでしたが、背が低いものから取り付けることでは、順序を間違えてやりにくかった場面がありました。同じ抵抗でも、寝かせるものと立たせるものがあったからです。
基盤のパターンの配線は、非常に苦労しました。ハンダの盛り方が多いと隣と接触しそうな場所が多く、浮かせて配線しなければならない箇所もいくつかあり、とても神経を使いました。
調整
説明書には、多少ややこしいので、じっくり読んでから作業に入ってくださいと書いてあります。それほどややこしくはありませんでしたが、マルチメーターのプローブを当てる人と半固定抵抗を回す人という具合に、もう一人ほしいと思いました。調整は、センサ部分を抵抗に置き換えて
4 ケ所の半固定抵抗で調整します。この調整により±10%RH
に校正されることになります。この失敗作では、調整しきれなかった箇所がありました。
調整の方法
図を参照してください。端子「Vin」と「GND」に電源
9V をつなぎます。次の順序で調整していきます。
- センサ部分を 1MΩの抵抗にして、VRt で TP1
の GND との電位が 100mV になるようにします。
- センサ部分を 20KΩの抵抗にして、VRs で TP1
の GND との電位が 500mV になるようにします。
- センサ部分を 1MΩの抵抗にして、VRo で TP2
の GND との電位が 0.000mV になるようにします。
- センサ部分を 20KΩ の抵抗にして、VRf で TP3
の GND との電位が 100mV になるようにします。
調整の実際
「概要」の「失敗の要因」の後述部分になります。メモを残していなかったので、数値は記憶によるものであることをお含みおきください。
- ぴったり 100mV にすることができませんでした。僅かなタッチで数
mV は変化してしまい、100.1mV で妥協しました。
- 半固定抵抗をめいっぱい絞っても、1500mV を越えていたように記憶しています。
- 半固定抵抗をめいっぱい絞っても、500mV を越えていたように記憶しています。
- うまく 100mV になってくれたように記憶しています。
動作試験
調整がうまくいかなかったのですが、動作するかどうか試してみました。もちろん「お得な!?デジタル電圧計」に接続してみました。
動作の実際
- エアコンのきいた部屋の通常の状態で、43.9%
となりました。
- 100% に近い値になることを期待して、湯気の立ち上るお湯のコップの上にセンサを置いてみました。110.6%
となりました。
- お湯のコップから離したら、値がどんどんと下がり、約
30 分後には、53.2% となりました。
考察
動作試験から、湿度の高い状態になると測定値は上がり、湿度が低い状態になると下がるという動作をすることは確認できました。しかし、湿度が
100% を越えることはありえないことですし、全体として十数
% 高く値が出ているとも考えにくいです。なぜなら、最初の部屋の湿度は、いくらエアコンをかけていたとしても、30%
前後であったとは思えません。調整の段階で失敗作であると確信していましたが、やはり見事に失敗していたといえます。
動作試験後
正常に動作するよう、製作の誤りを見つけ、修正しなくてはなりません。
結末
ついに、自分の誤りを見出すことができずに終わりました。まず、誤った抵抗やコンデンサを取り付けたことが考えられます。しかし、回路図と製作の工夫段階で作成したシートをいくらながめても見出せませんでした。つぎに、基盤のハンダ面の配線ミスが考えられます。配線をやり直してみました。そして、再度調整に望んだところ、半固定抵抗
VRs が全くきかない状態になってしまいました。やり直しているうちに、高温に弱い
IC を壊してしまったのかも知れません。
今現在の作者の力量では、再度キットを購入しても、同じ結末を迎える可能性が大きいと思われます。また、既に記したように「湿度計キット」だけでの販売はしていないので、もう一つ「デジタル電圧計」を購入する気にはなれません。ちょっと悔しいですが、失敗であったという結末で納めることにします。
負け惜しみ
デジタル湿度計キットを購入した頃(May.2000)は、作者の部屋にはエアコンがなく、快適な生活空間は自分の手でつくる必要があり、そのアイテムとして湿度計が必要でした。ところが、この夏の猛暑でエアコンをつけたことにより、湿度計はとりあえず必要なくなりました。エアコンの中に湿度センサが内臓されていて、自動的に快適空間をつくってくれるようになりました。
でも、もしかすると、このエアコンには、HS-15FPが内臓されていたりして…^^;
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