お得な!?デジタル電圧計を作ろう
〜 プロジェクト ひとりでできるもん! 〜
Last Update: 28th, May, 2000
概要
「ひとりでできるもん!」でおなじみの(有)秋月電子通商から発売されている計測器キットの幾つかは、「デジタル電圧計キット(分圧用抵抗セットを除く)」との組み合わせキットです。例えば、「デジタル紫外線計キット」は「UVセンサと抵抗2本」、「デジタル照度計キット」は「照度計のアナログ出力キット[DVMなし]」を組み合わせたものです。
そこで、デジタル電圧計部分のみを他のキットに流用できるように作っておくことは「お得 ! 」なことです。これはデジタル電圧計部分のみを作り、センサ部やアナログ出力キットを接続すると、電源も入るように工夫してみたときの製作メモです。
この作品の工夫した点は…
何といっても、ミニジャックを差し込むと動作することです。ミニジャックにつながるシールド線には、センサ部やアナログキットからの測定値となる電圧がかかっていて、ミニジャックそのものが電源スイッチである押しボタンスイッチを押す仕組みです。ですから、ミニジャックを差し込むと、電源が入るとともに、測定値が表示されます。
キットについて
「デジタル電圧計(DVM)キット」の特徴は次の通りです。
- 測定範囲は±200.0mV(最小分解能0.1mV)で、計測時間は2.5回/秒です。
- HARRIS社のICL7136が使用されています。
- ICL7136は、3・1/2桁表示、積分型A/Dコンバータで、消費電力が少なく、006P9Vマンガン電池で、連続3ヵ月の使用が可能です。
- 超小型基板(47×72mm)が使用されています。
- 基板が小型であるため、液晶表示部の下にICや部品が、さらにこのICの下にコンデンサが配置されるという3層構造になっています。
組み立て
キットに添付されている「総合マニュアル」は、わかりやすく丁寧に説明が書かれているので、それに従えば、問題なく組み立てることができます。
- あらかじめ、ICソケットの加工をしておきます。ICL7136用は内部の桟を切り取り、液晶表示器(LCD)用はすべての桟を切り取り、シングルライン2個にします。桟はニッパで楽に切ることができますし、カッターやヤスリ等で仕上げも楽です。
- ICソケットを取りつけた後では取り付けにくくなるジャンパー線3本とコンデンサ1ヶ、抵抗1ヶを取りつけます。ジャンパー線はなるべく基板に密着して取りつけるようにすると、次に取り付けるソケットとの干渉がありません。
- ICソケットを取り付け、コンデンサ、抵抗、ポテンションメータ、バッテリースナップを取りつけます。コンデンサは、ICL7136とぶつからないように、必要に応じて足を折り曲げて、寝かせるように取り付けます。また、抵抗は、片側のみ足を折り曲げて、立てるように取り付けます。
- ソケットにICL7136、LCDの順に挿入すれば完了です。
調整
総合マニュアルには、調整の方法として、次の2つが載っています。
- ICL7136の35ピン-36ピン間を100.00mVにする。
- 新品の水銀電池(起電力1.35V)を誤差1%以下の抵抗で分圧し、LCDが1227を表示するようにする。
今回は、前者の方法をとりました。部品面からは触れられないので、ハンダ面にプローブを当てることになります。レジストに1、2の印字がしてあるのですが、かなり見にくいですので、部品面とハンダ面を対応させて位置を見出すほうがよいと思われます。また、基板パターンをよく見て、当てやすい位置を見出すことをお奨めします。
ケースへの収納とスイッチや端子の取り付け
ケースに収納して、電源スイッチと電圧検出端子である「IN」と「COM」の端子を取り付けます。「COM」はアース側の端子です。キットには、電源スイッチや端子は含まれていませんので、別途用意します。
「総合マニュアル」に「LSI入力バイアス電流が低いので、完成後はなるべく金属ケースに入れ、COM端子をケースに接地(接続)してください。」と書いてあるので、100円ショップ「なんじゃ村」から、ちょうどよい大きさの缶ケース(およそ10cm×8cm×2.5cm)を見つけてきました。この電圧計とセンサやアナログ出力キットとの接続は、1本の線(シールド線)にしたいことから、「IN」と「COM」の端子は、ミニジャックの受け側にしました。電源スイッチは、ミニジャックを差し込むと押しボタンスイッチが押されるように工夫してみました。ミニジャック受け側を用いることで、COM端子は缶(金属)ケースに接地されることにもなります。
- 基板や端子、スイッチの配置を決めて、ケースの加工をします。液晶表示器の窓は、四隅にドリルで割止め穴を開け、金切りバサミでおおよその感じでくりぬき、裏側に折り曲げて危険のないようにしました。ミニジャック受け側の穴は、ドリルで穴を開けた後、リーマで大きくしました。
ケースの加工は、ケースの金属が薄いので、歪ませないよう力の入れ具合を加減する必要があり、やや苦心しました。
- 電源スイッチ(押しボタンスイッチ)をとりつける金具を加工し、取り付けます。金具はホームセンター等で入手できる小さなL字金具を用いました。ミニジャック受け側を取りつけてから、押しボタンスイッチの穴や取り付ける位置等を決めていきます。
L字金具が小さいので、押しボタンスイッチの穴をリーマで大きくするのにやや苦心しました。また、L字金具の不要部分を切り取るときは、ニッパで切るようにして傷をつけ、何回か曲げのばしをして金属疲労で折り取り、ヤスリで仕上げました。
押しボタンスイッチがミニジャックでうまく押されるようにすることがポイントとなります。L字金具を目分量で固定してから、押しボタンスイッチを固定するナットで、最終的な前後の調節を行います。L字金具を前後にスライドできるように取り付けて調節するのも一つの方法だと思われます。
- ケースに基板を取りつけて配線します。このとき、前もって基板からバッテリースナップの「V-」を外し、「V+」、「COM」、「IN」からリード線を出しておきます。基盤はケースの底から浮かせて液晶表示器が窓になるべく近くなるように固定します。
今回は、ちょうどよいスペーサがなかったので、長めのビスを用い、小筆の軸を輪切りにしたものをはかせました。このビスの頭が、ケース全体の足になってくれて、うまく安定してくれました。
終わりに
既に出来上がっている「デジタル照度計キット」のアナログ出力部分を取り出して、今回つくった電圧計(DVM)と接続してみました。ミニジャックが接触不良を起こすことがありますが、一応うまくいきました。
今回作った物は、「デジタル湿度計キット」の電圧計(DVM)部分です。湿度計のアナログ出力部分は別に作り、この電圧計と接続して使おうと思っています。
また、今後、(有)秋月電子通商の「デジタル微容量計キット」や「デジタルガウスメータキット」を作ることがあったら、「アナログ出力キット」のみを購入して製作し、この電圧計と接続して使いたいと考えています。
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