山芋掘りをしよう
〜 プロジェクト ひとりでできるもん! 〜
Last Update: 24th, Nov, 2000
概要
里山には、山の幸がいっぱいあります。春の山菜、初夏から秋の木の実、秋のキノコ、そして、晩秋の山芋です。紅葉もやや盛りを過ぎた新潟県小千谷市小栗山の寺沢地内の崖で山芋掘りをしました。そのときのメモをもとに、山芋の掘り方や山芋料理等を紹介しています。
山芋掘りの場所と期日
新潟県小千谷市小栗山周辺は、「山菜採りをして食べよう」でも紹介した山菜の宝庫です。この周辺で作者が山芋掘りのスポットにしている寺沢地内の崖に行ってみました。小千谷市街地から山古志村に向かう国道291号沿いで、浦柄三叉路より1500mほど進んだ北向き斜面です。斜面(崖)をねらうのは掘るための労力が少なくて済むからです。
葉の色づく11月に入れば山芋掘りのシーズンといってよいと思いますが、休日とお天気が一致した、2000年11月23日(勤労感謝の日)に、ようやく掘りに出かけることができました。
初心者には山芋のツルがしっかりしている10月末から11月上旬がお奨めです。慣れた人は、ツルが朽ちて芋が充実している、この時期から降雪前の期間をねらうようです。
山芋のツルを見つけよう
山芋は比較的早い時期から黄色に紅葉します。まだ他の植物が緑のうちに黄色くなりますから見いだしやすいです。葉の形はやや細長いハート型で、ツル植物ですので、背の低い潅木などに絡みつきます。他の山菜同様に無い所には無いのですが、有る所には有りますので、紅葉の始まりの時期に、黄色になっているツル植物を見たら、足を止めてみて、スポットを見つけておくとよいと思います。
しかし、山芋とよく似た植物でトコロがありますので要注意です。
初心者にとって、山芋(正しい和名はヤマノイモ)とトコロ(正しい和名はオニドコロ)は、地上部ではなかなか区別がつきません。葉の付きかたが山芋が対生(1ヶ所から一対の葉がついている)であるのに対してトコロは互生(交互に葉がつき、一ヶ所からは1枚葉がついている)です。葉の形は、トコロのほうが全体的に丸みがかっています。しかし、個体によっては丸みがかった葉で互生の山芋もあるので、決め手にはなりません。地上部で決め手となるのは、トコロには絶対にない特徴です。山芋は、「むかご」と呼ばれる茎に大豆ほどの芋がついている場合があります。「むかご」がついていれば山芋と断定してよいですが、「むかご」をつけない株もあります。ともすると、山芋とトコロが一緒に絡み合っている場合もあります。同じヤマノイモ科の植物ということもあり、生息に適した環境が似ているためか、山芋のあるところにトコロあり、という場合が多いです。
最終的な決め手となるのはイモ部分です。山芋が鉛直方向に長く伸びているのに対して、トコロは地下の浅いところで横に伸びています。参考までに、トコロのイモは苦くてガリガリしているので、食する人は通常いません。
掘ってみよう
山芋掘りには専用の道具が必要 のような感じがしますが、斜面では園芸用のスコップとハサミで十分です。もちろんスコップは土を掘り出すために使います。そして、ハサミは、掘っていく過程で邪魔になる他の植物の根を切るために使います。
- これぞ山芋のツルに間違いないと確信したものを地面にたどっていきます。山芋は基本的に互生の植物ですので、多くの場合、地面近くは、かつて葉のついていた場所が節のようになっています。
- 斜面の下側から慎重に掘り、邪魔な他の植物の根を切りながら掘り進んでいきます。今回は思いがけなく、地上部が消滅していた他の株がひょっこりと出てきました。:-) そこで、まずは手前の芋を掘ることにしました。
- 折らずに掘り上げたいものですね。折らずに掘れたときの喜びは格別です。それに、折ってしまうと、全体を掘ることが難しくなります。そこで、芋の向こう半分は土を付けたままにして、手前の土を掘り出していきます。芋の付近はスコップを使わず手で掘るようにします。今回は、思いのほか長かったので、斜面を崩すだけでなく、掘り込むようにしました。
山芋掘りでは、掘ったあとを埋め戻すことがマナーの一つです。斜面を大きく崩し、掘り穴を大きくあけると、埋め戻す作業が大変だからです。さらに埋め戻す作業を楽にする方法として、掘った土を穴の横に置くようにしました。
80cm程掘ったところで芋の先端に達しました。掘り始めてから30分以上はかかったようです。
- いよいよ芋の周りの土を掘り崩し芋を掘り上げます。それに先だち、今回は、芋の最上部付近を切りました。なぜなら、山芋掘りでは、茎と芋の境目付近から出ている「ひげ根」を残すこともマナーの一つだからです。もちろん「ひげ根」もろとも掘り上げてから、改めて植えてやってもかまいません。「ひげ根」と多少の芋があれば、その株は死滅することなく復活します。
- 掘り始めてから約1時間、1本目は折らずに掘り上げることができました。しかし、ツルを追っていった当初の芋は、折れてしまい、先端部分まで掘り出すことができませんでした。それは、1本目より長く、これ以上深く掘れないことから、引き抜く方法をとったためです。力をいれた瞬間、ポキッと音をたてて、土から出せなかった部分が地中に残ってしまいました。
- 掘った穴を埋め戻すことにより完了です。掘った穴をそのままにしておくと、落とし穴になりかねません。また、斜面の場合は、最悪の場合、斜面崩落の引き金になってしまいます。埋め戻すにあたり、掘り上げた土を全部集めることは不可能に近いですから、多少土が足りません。周囲から不足分を補い、できるだけ元に近いかたちにしましょう。
食べてみよう
食べ方は、基本的に八百屋さんで売っている「長芋」と同じです。ですが、「山芋」らしい食べ方をしたいですね。今回は、「山芋の刺身」と「おろし」いう簡単な調理をしてみました。山芋の皮は大変薄いので、よく洗えば皮をむく必要はありません。皮をむくことにより失われる芋がもったいないです。
「山芋の刺身」は、短冊に切るだけです。山芋の上部の細い部分は、ぶつ切りにします。あとは、わさび醤油やポン酢など、好みの味で食べます。
「おろし」は、おろし金ですりおろすだけです。大変粘りが強いので、おろし金に餅状にへばりつくほどです。「とろろ」にするには、だし汁でうすくのばさなければなりません。今回は、だし汁を使わず、餅状の「おろし」のまま食べることにしました。
家族には、「山芋の刺身」が大好評でした。サクッとした歯ざわりと山芋ならでは濃厚な風味が何ともいえません。2本の収穫のうち1本を調理したのですが、おかわりを要求され、2本目は全部「山芋の刺身」になりました。おかわりには「もう少し、厚く切ったほうがいいよ。」という注文もつきました。
他の食べ方
「山芋」ならではの食べ方としては、「おろしの磯辺巻」があります。「おろし」は餅状ですので、海苔巻にすることができます。
また、煮物もなかなか逸品です。「里芋」なみのきめの細かさで濃厚な芋の味わいの「長芋の煮物」という感じです。
山芋に関するミニ知識
最近手に入れた雑多な知識ですが、何かの参考になればと思います。
- 山芋を「じねんじょ」と呼ぶことがありますが、正しい表記は「自然薯」です。「自然芋」は、わかりやすさからくる「当て字」だと思われます。
- 山芋のツルに「むかご」がたくさん付いている場合があります。「むかご」も立派に食べられます。ややあくが強いですが、濃い味に煮つけたり塩茹でにしたりすると、ちょっとした珍味です。これを炊きあがったご飯に混ぜてむらした「むかご飯」も、なかなか美味しいです。
- 山芋は根ではなく、茎の一部が肥大したものだそうです。そういえば、茎と芋の間に「ひげ根」がありますね。この「ひげ根」が根なのだそうです。
- 山芋を掘っていると、芋のすぐ脇に、炭質化した芋の抜け殻のようなものが見られることがあります。これは、前の年の芋です。今年の地上部成長の養分として使われた残りかすです。今の芋は、今年の地上部が作り出した澱粉等が蓄えられたもので、来年の地上部成長の養分として使われます。このようにな芋の世代交代を「担根体」というそうです。
- 「長芋」は中国原産の栽培品種です。「山芋」の中には、「長芋」が野生化したものもがあるそうです。思い起こせば、何年か前に、大きな「山芋」を掘り上げたことがありますが、水っぽくて「長芋」的な味でした。大きな芋が掘れたものの糠喜びでした。これが野生化した「長芋」の例だったようです。:-P
おわりに
山は、必ず持ち主がいます。個人の山の場合は持ち主に許可をもらえば一番よいです。しかし、持ち主がわからないことが多いですね。そこで、山菜採りやキノコ採りなどをしたときに、禁止の標示がなかった山や地元の人から叱られなかった山しましょう。そして、マナーを守り、自然を大事にすることにより、山の持ち主と上手につきあっていきましょう。
この「山芋掘りをしよう」では斜面での例を紹介しましたが、斜面で山芋掘りをする場合は、転落事故等に十分気をつけてください。2本の山芋を収穫するために、斜面の上り下りを含めて、全身土まみれの大汗をかく半日仕事でした。帰ってきてからの衣類の洗濯などを入れると、時間も手間もかかります。それに、翌日は全身筋肉痛です。しかし、掘っているときの楽しさ、収穫した山芋の美味しさは、それらの代償に勝る価値が十分にあります。
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