コヒーラ式雷検知機を作ろう
〜 プロジェクト ひとりでできるもん! 〜
〜 第3回インターネット合宿板金工作 〜
Last Update: 31th, Jan, 2001
資料編
コヒーラって ?
「コヒーラ」とは「接触」という意味で、簡単にいうと電波探知機の一種です。
ここで作るコヒーラは図のようですが、アルミ箔短冊の電極の間を多数のアルミ箔球でうめています。アルミニウムの表面は空気にさらされていると酸化アルミニウムになるので、電極とアルミ箔球は、酸化皮膜で包まれたかたちとなります。
ですから、両電極間の抵抗値は高い値を示します。それが、外部から火花放電などの電波が与えられると、皮膜が破壊され、アルミニウムが接触するので、導通状態になるのです。一種のスイッチと思えばよいでしょう。
ここでは、雷の代わりに圧電式ライターの火花放電により、電波を発生させます。すると、導通状態となり豆球が点灯します。豆球を消灯させるには、コップをコツンとたたきます。すると、破壊された部分がずれてしまい、皮膜で覆われた箇所で接触するようになるために、電気が流れなくなります。
ちなみに、1895年にマルコーニは火花式発振器で電波を飛ばして、コヒーラを用いて2.4Km離れて受信した記録があります。この時代のコヒーラは、細いガラス管の中に、ニッケルの粉末と銀の粉末を混ぜて両端を閉じ、それぞれに電極端子を設けたものでした。
作ってみよう
用意するもの
- アルミ箔(アルミホイル)
- 豆電球
- 豆電球ソケット
- リード線
- 電池
- コップ
- ガスの抜けた圧電ライター(安全のためガスの抜けたもの)
- セロテープ
- (電池ボックス、ミノムシクリップ付リード線、テスター)
作り方(図を参照)
- コップにアルミ箔の電極を付けます。アルミ箔を幅1cmぐらいの短冊にして、セロテープでとめます。短冊はコップの底までとどくようにします。
- 電池と豆電球をリード線で電極につなぎます。
- アルミ箔球を10ケほど作り、コップの中に中に入れます。アルミ箔球は、10cm四方ぐらいのアルミ箔で作ります。
試してみよう
- 圧電ライターでカチッとミニ雷(火花放電)を発生させましょう。うまく点灯してくれるかな?
- 電極(アルミ短冊)やアルミ箔球の大きさをいろいろと変えてみましょう。うまく点灯するときの大きさは?
- 電球を取り替えてみましょう(1.5v、3.8v、…)。どの電球がわかりやすいでしょう?
- 感度をあげるには、アンテナ線はあったほうが良いのかな?良いとすれば、その大きさ(長さ)は?
参考
付録(金属の酸化されやすい順)
金属の酸化されやすさは、金属イオンになりやすさ、すなわち、イオン化傾向の順と一致していて、次のとおりです。
K>Ca>Na>Mg>Al>Zn>Fe>Ni>Sn>Pb>(H)>Cu>Hg>Ag>Pt>Au
K〜Mgまでは、常温でも空気中で内部まで酸化されてしまいます。Al〜Cuは、常温の乾いた空気中で表面は酸化されますが、酸化物の薄い膜に覆われて内部は侵されません。このうちAlだけは、空気中で強熱すると、赤熱しながら内部まで酸化されます。Zn〜Pbは、常温の湿った空気中でゆっくりと酸化されていきます。Hg〜Auは極めて酸化されにくいです。このうちHgは沸点(356.6℃)近くまで熱すると酸化されますが、いわゆる貴金属であるAg〜Auは、空気中で強熱しても酸化されることはありません。
実践編
合宿では細かく記録写真を撮らなかったので、基本的には新たに製作しながら再現したものです。合宿での記録写真も含めて紹介します。
作ってみました
- 資料の図を参照しながら、一人はコップに電極をつけ、一人はアルミホイル切り、他の人たちは、切ったアルミホイルで球をつくっていきました。10cm四方のアルミホイルをほどよく丸めると直径1.5cm程の球形になります。
- 参考のために、豆電球にかかる電圧をテスターで測定することにして、ミノムシクリップ付導線で接続しました。電池は単三を2ケ直列にしました。
- すると、なんと導通状態で、豆電球は点灯し、電圧は31.8Vを示しました。まずは失敗です。コップいっぱいにアルミ箔球を入れていたので、数が多いためではないかと考え、アルミ箔球を20ケ程度にしてみました。
- コップを振ったり叩いたりしているうちに、豆電球が消灯し、電圧が0Vになりました。作りはじめたばかりのときは酸化皮膜が十分にできていなくて、少し時間が経つことにより酸化皮膜がしっかりとできたのかも知れません。作り始めてから10分程経っていました。
作る前に手を洗うことを推奨している記事を見たことがあるという人がいます。手を洗う理由は、手の油脂が酸化皮膜の形成をさまたげることにあるようです。コヒーラの製作では酸化皮膜がポイントですね。
- いよいよ圧電ライターでミニ雷を発生させます。何人かでコップの周りでカチッ、カチッ、とやってみました。ところが、電圧0V、豆電球は点灯しません。失敗したのかなぁ。^^;
- コップの中を覗いて見れば、ちゃんと電極とアルミ箔球は触れ合っています。酸化皮膜が壊れてくれないだけのようですので、ミニ雷を発生させ続けました。電圧0V、豆電球消灯状態に変化はありませんでした。^^;;
- そこで、コップになかば入るような所でカチッとやってみたら、お見事、豆電球が点灯しました。成功です。
- 今度はコップを叩いて導通しない状態にしようとしました。軽く叩いた程度では切れてくれません。導通してしまうと、豆電球を点灯させたままではうまくいかないのではないかという意見があり、豆電球をソケットからゆるめて消灯させた後にコップを叩くことにしました。すると、うまくいき、電気の流れを切断することができました。電圧計が0Vを示してくれたのです。
- その後、何回か導通・切断を繰り返していく中で、用意したライターの中では、タバコを1カートン買ったときのおまけに付いてくる、キャビンマイルドのライターが最もよいことが分かりました。使い捨てライターの中には、とうとう酸化皮膜を破るだけのミニ雷を発生させることができない物もありました。
試してみました
資料編の「試してみよう」の内容と違いますが、楽しみながら試してみたことを紹介します。
音を鳴らしてみよう
豆電球の代わりに圧電ブザーの電子メロディーをつないでみました。もちろんうまくいったわけですが、豆電球にない良さを見いだすことができました。それは、電気の流れを切るときが大変スムーズだということです。コップを軽くコツンと叩くか、乗せてあるテーブルにドスンと振動を与えるだけでうまくいくことでした。
光と音の競演?
豆電球と電子メロディーを並列につなげば、光と音で導通を確認できます。発光ダイオードも使ってみました。発光ダイオードの場合も電子メロディー同様に、電気の流れを切ることがスムーズです。
アンテナは不用?
少なくとも、今回製作したコヒーラにおいては、アンテナは不用でした。アンテナを付けても取っても全く変わりありませんでした。コップの中になかばライターを入れてミニ雷を発生することによって導通するのですから、コップ外のアンテナは意味がないのでしょう。
成果と課題
まとめとして成果と課題を箇条書きにしてみます。
成果
- 身近な材料でコヒーラを楽しむことができます。
- アルミの酸化皮膜の形成がポイントなので、うまく動作するまでには、酸化皮膜が形成される時間が必要です。
- 電気の流れを切れやすくするには、電子メロディーや発光ダイオードなどのわずかな電気で動作するものを用いるとよいです。
課題
- 今回つくった物が雷検知機として実用できるかどうかわかりません。恐らく、実用できる物にしていくには、電極の大きさやアルミ箔球の数などをはじめ、感度を適切にするための試行錯誤的な実験の積み重ねが必要であると思われます。
ひとりでできるもん! トップページ
NISOC トップページ
Copyright(C) NISOC
Copyright(C) NISOC-DIY (Project HITORIdeDEKIRUmon)