10 26 日(土)
 


 1  10月26日 13:30 〜 14:30 (1時間) ※13:00 開場
基調講演
「ユーザーからみたインターネットを巡る現状と問題点」

■講師:
小倉利丸(富山大)

■内容紹介
インターネットの普及に伴って、今年にはいってからへ、国際的にもまた国内的にも 、インターネットの規制問題がクローズアップされ始めている。この規制問題は、政 府による行政指導、法改正、プロバイダーなどの業界団体による自主規制といった伝 統的なマスメディアや出版業界における規制のルール、法制化に関してとられてきた 手法がそのまま援用される傾向がある。こうした規制問題のなかで、いままであまり 議論されてこなかったrootと一般ユーサーの関係について問題提起をしたい。
 私たちの社会は憲法で基本的人権が保障され、また民主主義的な手続きによって人 々が市民として平等な権利と義務に基づいて運営されている、というのはあくまでタ テマエであって、実際には、職場や学校などの組織の中では、こうした権利は制限さ れ、あるいは無視されさえしている。他方で、コミュニケーションのネットワークは 、組織の内部と外部の垣根を超えて個人を相互に結びつけ始めている。私用と公用の 区別はつけがたいことは、職場に届く電子メールに私用のメッセージが届く一方で、 自宅のパソコンには職場の仕事のメールが届き、昼夜の別なく携帯電話に仕事の用件 が入り込むということが日常化しているなかに如実に現れている。こうしたコミュニ ケーションの変容のなかで、今問われているのは、組織の内部で、個人がみずからの コミュニケーションの権利をどのように主張できるのか、主張しなければならないの か、ということである。企業や学校という組織のなかでコミュニケーションに関わる 市民的な自由や権利を主張することが、同時にその外での市民的な自由と権利の保障 と深く関わってきているのだということを自覚する必要に迫られているのである。
 こうしたなかで、rootは非常に重要な位置にあるとともに、rootがどのような立場 にあるべきかを真剣に検討すべき時にきている。インターネット全体を統括する管理 者がいないとはいえ、企業や学校などの組織、あるいはサービスプロバイダーなどで サーバーを管理し、rootとしての特権を有する管理者は不可欠である。しかも、イン ターネットの規制問題では、rootの管理者が規制の現場で矢面に立つ可能性が出てき ている。ユーザーから見た場合、rootは絶対的な権力者である。しかし、rootもまた 組織の一員として管理職や経営者にとっては単なる社員、職員でしかない。インター ネットの内容にたいする規制問題が厳しくなるにつれて、ユーザーとrootの関係は大 きく変化する可能性が出てくる。ユーザーにとってrootはどうあってほしいか、また 、rootが組織全体や上部の管理職等に対して、その独立性を維持するにはどうしたら よいのか、こうした問題を考えてみたいと思う。

■講師略歴
小倉利丸 1951年生まれ。富山大学経済学部教員。現代資本主義論、情報資本主義論 などを講義。著書に『アシッドキャピタリズム』〔青弓社〕など。電子ネットワーク 協議会の倫理綱領に対する抗議声明の呼びかけ人で、censorメーリングリストの管理 人。インターネットのユーザーグループ設立の準備を進めている。


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